「御門」


彼女の口から漏れる、俺の名前。


「そんなに思いつめないでよ。私は、大丈夫だよ?」


優しい笑顔が、視界を照らす。


「私の気持ち、教えよっか」


無邪気に笑った彼女を見ると、胸が痛い。


夏咲は笑顔を保ったまま、


「あのね、私の好きな人はね、貴方なんだよ」


そう、言ってくれた。


「あなたのことが、初めて見た時から好きなの。一目惚れってやつ?だから、あの夜も嫌じゃなかったよ」


「え?」


覚えているのか?


「曖昧……ぼんやりと、だけどね。貴方は私を愛してるって言ってくれてたんだね」


届かないとわかっていながら、何度も囁いた言葉。


届いていたのか。


「温もりに包まれていたことは、覚えてるよ。そっか。あんなに安心したのは、好きな人だったからだけじゃなくて……あなたが全身で、愛を注いでくれたからなんだね」


ああ、そうだよ。


言葉で表せないくらい、君が好きなんだ。


愛しているんだ。


「御門、ありがとう」


「……」


「フフッ、泣かないで」


自然と、涙が溢れた。


彼女は、俺を受け止めてくれた。


拒絶することなく、笑顔で。