私はギィッ、ギィッと鳴るボロい階段を昇り、恐る恐る、その部屋……306号室のインターホンを押した。


「ピンポーン」


部屋のドアも見るからに年季が入っていて汚くて……こんな所にデリヘルを呼ぶ男なんて、どう考えてもマトモじゃない。


(頼む、出て来ないでくれ……)


私は祈った。


しかし……そんな私の祈りも虚しく、そのドアはガチャっと開いた。

こうなってしまったら、もう仕方がない。

私は腹を括り、開き直った。



「おはようございます! うららで〜す」


私はいつも通り……

最高の愛想を振りまいた。

いつもはふて腐れてる私だけれど、お客様サービスには最大限に気を使っている。

それが、私の人気の秘訣なのだ。


だが……ドアを開けたその男を見て、私の胸はドキッと鳴った。


(うそ……カッコいい)


黒髪ですらっとした体型、切れ長の目……そして、黒豹柄の服を纏った彼は、デリヘルを呼ぶような男とは思えないほどにイケメンで。

私は思わず、見惚れてしまった。


暫し放心状態になっている私を見て……彼はそのクールな目を細めた。


「お待ちしておりました、プリンセス」

「えっ、プリンセス? あ、そういうプレイがお望みなのね」

「はい? プレイ? 何をおっしゃっているのです?」


ホテルの玄関に上がって、早速仕事内容を確認しようとした私に、彼は首を傾げた。