《くっ…》


再び杖を持つ手に力を入れ

て詠唱する。


『来た…れ、大地の王…


ベヒ…』


《遅いっ》


だが唱えるより早く敵の拳

がティアの顔に直撃した。

声を上げる間もなく飛んで

ゆく。口が切れ、綺麗な顔

が苦痛に歪んだ。


《その表情…そそるねぇ》

もはや異常なまでの不気味

さで近づいてくる。


《ハァっハァ……》


ティアの息が荒くなり


視界が霞んでいく…悔し涙

が頬を伝い落ちる…こん


なとこで……わたし…わ…

や…だ…。


《悪く思うなよ、目撃者は

消せとの命令だ》


敵の剣がゆっくり上がり


頭上に振り下ろされる。


ティアは死を意識した…


今までの事が走馬灯の


ように頭に駆け巡る…


ババ様…ごめんなさい…


絶望と混沌の帳が幕を


下ろそうとしていた…。


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   第一章 完