◆コウタside◆
俺の彼女・リカは、今年で23歳。
童顔に負けて劣らず、性格も子供っぽいところがある。
だけどさ。
一人暮らしの俺のために、
うまい料理を作ったり、部屋をキレイに掃除してくれたりするんだ。
几帳面な母親に育てられたせいか、俺もその性格を受け継いでしまった。
部屋にゴチャゴチャと物を置くのは好きじゃない。
生活に必要なものだけがあればいい。
たとえば、家電製品とテーブルとイス。
部屋を掃除するときも、ちゃんと手順があるんだ。
まず掃除機をかける。
部屋の四隅も、ノズル使ってしっかりとね。
掃除機のあとは、クイックルワイパー。
さらにそのあと、雑巾がけ。
――これで完了。
嬉しいことに。
リカも俺とまったく同じ手順で掃除してくれるんだ。
こんな彼女、はじめてだよ。
前の彼女は掃除機かけて終わりだったし。
部屋の四隅なんて、まったくもって無視。
しだいに四隅に溜まり始めた、三角形の埃。
イライラしながら掃除したのを覚えている。
リカの料理もすごいんだ。
おいしいだけじゃなくて、見たこともない料理を作ってくれる。
見たこともないって言っても、変な料理じゃない。
なんだろうな。
大げさに言えば、料亭で出されるような、一風変わった料理。
しかもさ、
本なんか見ずに、パパパッて作ってくれるんだよ。
スーパーに一緒に買い物に行った時も、
「今日はなに作るの?」
期待して聞く俺に、いつもリカは言うんだ。
「まだ決まってない。いろいろ見てから決めるよ」
すげぇぇぇ。
スーパーの食材見てから決めるなんてさっ。
しかもそのあとに作る料理はプロ級なんだよ。
リカを……。
俺の奥さんにしたら……。
俺の人生、言うことなしだ。
料理もウマイ、掃除も完璧。
洗濯だって、皺を伸ばすようにして手で叩いてから干す完璧さ。
リカ……。
俺と結婚してくださいっっ!!
◇リカside◇
あたしの彼氏・コウタは、すっごいかっこいいんだ。
会社の同期で、出会いは入社式。
新入社員代表として挨拶した彼に、女子社員は目をキラキラ輝かせていたっけ。
もちろん、あたしもその中のひとり。
でもね?
あたしは他の子とは違ったわよ?
みんなが
「コウタくんの彼女になってやる!」
と意気込むなか。
あたしは
「コウタと結婚してみせる!」
って鼻息荒くしていたんだから。
コウタが参加する飲み会には、絶対に顔を出していた。
女子社員がキャーキャー騒ぎながらコウタを囲む。
あたしはひとり、輪の中から外れたんだ。
もちろん、わざと。
『あんたなんか興味アリマセン』
冷ややかな視線を送っていたんだ。
あ、もちろん、これもわざと。
作戦がうまくいったのか、コウタってばあたしにあっという間に夢中になっちゃって。
『付き合ってよ』
そう言ってきたのはコウタの方だった。
つーか、『結婚してよ』となぜ言わない!?