「奏輔さんが言ったのは完全にセクハラ、モラハラの域です。会社組織の中だったら社内規違反で懲罰モノですよ!」
 びしっと人差し指を突き付けていうと奏輔さんは、「だってさあ……」と不服げに呟いた。

「だっても何もないです。この間のバイト面接の時に注意したのに、なんでまた同じ過ちを繰り返すんですかっ」
「だってな、悠花ちゃん」
「だってもへちまもないです!」


 ぴしゃりと言うと、奏輔さんは恨めしげに佐保ちゃんを見やった。
「……チクリ女」

 佐保ちゃんは、べーと舌を出して笑った。

「そんなことより、あと三十分で開店だよ。いいの?」
「あ、いけない。お花生けちゃわないと」
「そっちは私がやったげる。悠花さん、他にもやることあるやろ」
「ありがとう~、助かる~」

 私たちがそれぞれ動き始めると、奏輔さんもブツブツ言いながら厨房の方へ引っ込んでいった。

テーブルを拭いたり、ナフキンやシュガーポットの中身を確認している私の横で佐保ちゃんは手際よく、草花を花瓶に生けてくれた。

 色合いといい、茎の長い薄と、他の花々との釣り合いといい見事としかいいようがない。

 素晴らしいとは思うけれど、それに引き換えて我が身の拙さがつくづくと思い知らされてしまうなあ。

 佐保ちゃんのほぼ倍(!)近く生きていながらいったい私は今日まで何をしていたんだろう、なんてネガティブなことを考えてしまう。