「奏輔さん。本当に新しいバイトの子、雇う気あるんですか?」

「あるに決まってるやん! そうでなかったらこの忙しいのにわざわざ時間とって面接なんかするわけないやろ! 求人出すのにだって金かかっとんやから」

「だったら」
 花鋏を手に菊の花の水上げをしていた私は、手を止めて奏輔さんをじっと見た。

「なんでせっかく来てくれた応募者を皆、怒って帰らせるんですか。採用しないんならしないでいいんです。怒らせることないじゃないですか。おかげで求人サイトの担当者さんからは苦情がくるし。この間、グルメサイトに酷評書き込まれたのだって絶対、この前、奏輔さんと大喧嘩して帰ったコのどっちかの関係者ですよ。本人かもしれないけど」

「……証拠もないのに人を疑うのは良くないで。悠花ちゃん」

「私だって疑いたくて疑ってるわけじゃないです! っていうか今話してるのはそいういうことじゃなくて! 客商売をしてるのになんで無駄に敵を増やすようなことをするんだって言ってるんです。私は!」

語気を強めて言うと、奏輔さんは両耳を押さえるポーズをして、
「そんな悠花ちゃんまでギャンギャン怒らんとって。さっきの女に喚かれて、俺こうみえてもダメージ受け取るんやから」
と哀しげな顔をしてみせた。クールの顔立ちの美男のそんな子犬のような表情はいつ見ても可愛い。悔しいけれど。