一応家の鍵は持ってるから、自分の家に帰って来た。泊まる準備だけして数日分の着替えとその他諸々。まぁ、隣だから忘れたら取りに行けるだろうし。

「どうするかな…」

さっさと隣にいけばいいんだろうけど、教室を出るとき優は彼女とこれからどこかに行くみたいな話が聞こえていた。もしかしたら家なのかもしれない。
そう考えると、安易に家なんて行ったら、その…最中かもしんないし。て言うか、のこのこやって来て彼女さんに目をつけられて優のファンの子とたちから苛められでもしたら…生きていけない。

「やめようかな…」

もう高校生だし、一人で1ヶ月くらい暮らせる。料理だってある程度はできるし、死にはしない。こんなところに不審者なんて来ないだろうし、こんな私のことなんて誰も襲いはしないだろう。


「もう10時か…」

結局優の家には行かず自分の家で夕飯を済ませた。お風呂も入ったし、あとは寝るだけ。

ピロリン

ベットに入ろうとしたら、通知を知らせる音が。
見ると、

『お前、どこにいる?』

優からだ。久しぶりの連絡は文面からも伝わる素っ気ない文字で、なんたか寂しくなるけど気にかけてくれてるということに捉える。

『家だけど』

簡潔に伝えると、すぐに

『なんで?』

と帰ってきた。

…なんで?なんでって言われても…。あんたが彼女と出かけるみたいだから、気をきかせて行かなかったんですよ。

『…なんとなく?』

『別に一人でも大丈夫だし、優も一人がいいでしょ?』

そう返信して眠りについた。


「んっ…ふぁー…」

いつものように時間を見ようとスマホに手を伸ばそうとしてなんだか体が重く感じた。それにすごく…暑い。まだ6月だ。不思議に思って重い瞼を開けると目の前には…
閉じた瞼にあり得ないくらい長いまつげ。薄くあいた口。高い鼻梁。少し目線を上にすると、さらさらな黒い前髪。

「………きゃぁーーーーーっ!!??」

爽やかな朝に私の叫びが響いたのだった。