「・・・あのぉ、お待たせしましたぁ」

そのタイミングでコーヒーが出来上がってきたらしく、一部始終を見ていたらしい店員さんが、恐怖にひきつった営業スマイルをうかべながら、声をかけてくれた。
私は助かったとばかりに、ふたつ並んだコーヒーを乗せたトレイを店員さんから奪うようにして受け取り、悠さんの待つ場所まで向かう。

社長はきっと、悠さんがこの後予定が入っていたとしても、その予定が終わるのを待ってでも撮影するつもりなんだろう。

誠さん達の話から、悠さんは主張しないみたいだけど、だからといって何も思ってないわけではないと思う。
そんなに強引に進めて、もしかして悠さんの気が変わってしまうこともあるかもしれない。

それなら・・・。

私は、せめてカメラマンさんが捕まらないことを祈った。