誠さんから話しかけられて、自分が置かれている状況を思い出す。

「はい!」

返事をした後に、もしかして、な可能性が頭に浮かび、おそるおそる確認する。

「もしかして、もうどこかのプロダクションに所属されていますか・・・?」

誠さんは一瞬目を丸くし、笑った。

あ。誠さんって、笑ったらワイルドな感じが和らいで、かわいく見える。

「いや? 多分、声をかけられたのも初めてじゃない? なぁ、悠?」

誠さんに問いかけられて、ずっと無言だった悠さんが初めて口を開いた。

「うん、初めて。 何で僕なんかに・・・」

「僕なんかなんて、言わないでください!」

自信なさげに言う悠さんに、思わず大きな声で否定してしまった。
その様子を見ていた誠さんが、自分達が出て来た美容院を指差す。

「話が長くなりそうだし、入ろうか。 今日はもうお客さんの予約もなかったし」