どんどん贅沢になるな……と、やり場のない右手でショルダーバッグの肩紐をぎゅっと握ったとき、前方から歩いてくるカップルがふと目に留まった。

まったく知らない人だと思ったのは一瞬で、すぐにはっとして目を見開く。それは私だけでなく、相手も同じ。


「あれっ、麗!?」

「えぇ~桃花!」


偶然行き会ったのは、またしても桃花と颯太だったのだ。なんとふたりもここでデートしていたらしい。

出かける前にも見た、オシャレしたお互いにこうやって会うのは気恥ずかしいうえ、不破さんが「どんだけ気が合うんだよ、お前ら」と呟くものだから、大笑いしてしまった。

少し興奮を落ち着け、今日はずっと手を繋ぎ合っている桃花に一応確認してみる。


「ちゃんと付き合うことになったの?」

「……うん」


照れながらもしっかり頷いた彼女に、私もほっとして笑みがこぼれた。

すると、颯太が私にまっすぐ視線を向け、「麗」と呼びかける。その瞳には、私と付き合っていた頃とは違う男らしさがかいま見える。


「今回のことは僕に責任があるんだ。無神経なことして、桃花と気まずい思いをさせて、本当にごめ──」

「待った」