四方はすぐにやってきた。
相変わらずのニコニコ顔で、頭をかきかき「やっ、どもども」と現れたところは、まるでお笑い芸人が舞台に登場するみたいな感じだ。
わたしに対してもペコペコして、
「やっ、先ほどはども」
なんて言う。
つられて、わたしも頭を下げた。
「ああ、顔見知りなわけ?」
「ええ、今日もお昼を――」
成宮係長の何気ない問いに、四方がうかうかと昼食のことをしゃべりだした。
あんた、まさかプロポーズのことまでしゃべる気じゃないでしょうね?
わたしはあわてて大声を出して、四方のセリフをさえぎった。
「ええー、そぉなんですよぉ、今日もお昼に仕事のことで、いろいろと教えていただいたものでぇ」
笑顔を浮かべながら、横目でじろりと四方をけん制した。
なんて高等テクニックなのかしら。冷や汗が出るわ。
「あそ。じゃ、まあ、話は早いんだけど」
成宮係長は深く詮索はせずに、四方に仕事の話を始めた。
さすがは技術屋さんだけあって、要点を押さえて、簡潔に現在の状況と問題点を伝えるものだった。