「いやあ、まずいなあ、そりゃぁ」
特殊機械部、設計課の課長を兼務している高木部長は、そう言って顔をしかめた。
小湊課長から話を通してもらった直後の反応だ。
「申しわけありません。こちらも急な話でしたので、ご迷惑をおかけしますが、なんとかご協力をお願いできないでしょうか」
わたしも頭をさげた。
高木部長は白髪頭をかきむしってから、
「ちょっと、成宮君、いいかな?」
と、離れた席に座っている成宮係長を呼んだ。
はい、と返事して、黒縁の眼鏡をかけた男が部長の席へやってきた。
顔色のあまりよくない、神経質そうな男だ。確か30台なかばの歳だったと思う。
高木部長から成宮係長へ、話の要旨が伝わる。
「えーっ? そんなことを言われたって……」
「そうだよなあ。困ったなあ」
ふたりで困った困ったと頭をかかえている。
わたしはもう一度頭をさげた。
「申しわけありません。週末で、いろいろご予定もおありでしょうが――」
「いや、そんなのはいいんだけどさ。オレ、もう残業がイッパイイッパイなんです」