まだ腹の虫は収まらなかったが、しょせんわたしたちは弱い部署だ。
だったらさっさと頭を切り替えて、問題に立ち向かったほうがいい。
「川中さん、ちょっといいかしら」
呼びかけると、デスクでうつむいていた川中さんは、びくりと体を震わせた。しかたなしに、といった感じで立ち上がると、わたしや課長と目を合わせないようにうつむきかげんに歩いてきた。
「川中さん、今聞いたとおりよ。悪いけど今日は――」
「無理です」
「え?」
「無理です」
川中さんは機械仕掛けの人形のようにフルフルと首を横にふる。
「無理って? あ、大丈夫よ。もちろん、わたしも手伝うから」
「あたし、今日は用事があって、定時で帰らないと」
「それは……都合つけてもらえないかしら? 今から連絡して」
「そんなのダメです。今日はどうしても行かなくちゃ。彼が……今日は大事な話があるからって」
「彼……」
わたしは呆れて彼女に見入った。