長い年月が過ぎ、ボクは三十歳になった。
 ボクらは、あの日からは考えられないほど、立派な大人に成長したと思う。
 今、ボクはあなたと手を繋いでいない。
 片手に買い物袋を持ち、もう片方は、小さな子供の手を握っている。
 あなたもまた、片手にカバンを持ち、もう片方、は小さな手を握っている。
 
 『ねえぱぱ、まま、きょうのごはんはなあに?』
 
 この小さな手の主が、ボクらに言った。
 しっかりと僕らの手を握りしめて。