« あなたと手を繋ぎたい»
 
 その思いで、いっぱいだった。
 ボクは消極的な性格で、いつも言い出せないでいた。
 あなたはとても疎くて、ボクの気持ちに気づかない。
 そんなことをしているうちに、気づけば付き合い始めて一年、まだ手すら繋いだことがない。
 今日こそと思い、あなたに話しかける。
 
 “ねえ、……。えっと、その……。”
 
 決心したはずなのに、言葉が出ない。
 焦れば焦るほど、どうしていいか分からなくなる。
 ネクタイを頭に巻いたオトコたちがボクを囃し立てる。
 ボクの顔が、オトコたちに負けないくらい真っ赤に耳の先まで染まった。
 今、その場にいることができなくなり、あなたを置いて、ボクは走り出した。