「だからさー、それって絶対好きなんだって」

友人の実(マコト)がうんざりした顔で言った。昼休み、お弁当を広げての会話。

河野薫に対する私の分析、足元の輪の話を聞いた彼女の感想。

いや、彼女はいつだってそうだ。結論はいつも一つ。好きか嫌いか、二者択一。

「いいね、実は。そんな風に割り切れて」

ちょっとムっとした私は、軽く実を怒らせる。

「あんたこそ、優柔不断過ぎ。考え過ぎ。見てるこっちが疲れる」

ずばずばっと言いながら、それでも彼女はにやっと笑う。

「いい加減、負けを認めなさい」



負け、と言うと御幣があるなぁ。思ったけど、言うのはやめた。実には勝てない。

あ、そういうことか。実に対して負けってことか。

また一人で考える。口には出さない。でも、彼女は気付く。

「ほらー、今は食べることに集中。もしくは話すことに集中、ね」

まるで思考回路が流れ出してるみたい。実には隠し事はできない。

「ってことは、やっぱり実の言うとおりなのかなぁ」

思考の一端を口にしたに過ぎないのに、彼女は聞き返したりしない。

「そうだよ」

実の声と、私の声と、私の頭の中と。二人で話しているのに、出口はいつも三つだ。