パチンと目を開けると、布団の中に入っていた。
「あれ?」
私はむくりとベッドから起き上がった。カーテンの隙間から、朝焼けらしき光が差し込んでいる。見下ろすと昨日と同じ服をきていた。目をゴシゴシこすって、ベッドから降りる。ちょっとふらついたけれど、アルコールは残っていない。ベッドサイドのデジタル時計を見ると、午前4時だ。
私はフラフラと部屋を出て、朝のしんとした静かな空気の中を足音を立てないように、バスルームまで薄暗い歩いた。
「昨日、タクシーの中までは覚えてるんだけどなあ」
それからの記憶がないってことは、眠っちゃたってことなんだ、きっと。じゃあ佐伯さんが私を担いで運んでくれたってこと?
「うわ、やば」
私は顔を両手で覆った。社長に酔っ払いの面倒を見させる新入社員って、クビにされてもおかしくないよね?
バスルームの扉をガラッとあけると、ムワッと暖かな蒸気が顔にあたった。目を凝らすと、バスタオル一枚の佐伯さんが立っているのが目に飛び込んできた。濡れた髪に上気した顔。細いけど引き締まった体までよく見える。
「ご、ごめんなさいっ」
私は勢いよくバターンと扉を閉めると、廊下でへたり込んだ。アルコールは抜けたと思っていたけれど、勘違いだったかもと思うほど心臓がばくばくする。
男の人の裸は見たことがある。柔道着がはだけたりすると見えたりするし……でも佐伯さんのはそんなんじゃなかった。柔道仲間とは体つきが全然違う、むしろ細くて頼りない感じさえするのに……なんだろう、しなやかで色気が……。
バンッと両手で頬を叩いて、淫らな想像を打ち消した。ダメ! こんなこと考えちゃ!