千葉の協力はもらえないとわかったので、なんとか私だけで佐伯さんの正体を確かめなるしかない。
最初のヒントはわからないうちに終わっちゃった。二つ目は『メガネ』で、三つ目が『2012』だったと思う。
私は自分の机で首をかしげた。「2012年」に佐伯さんに会ったってことかなあ。これって私が高校二年生ぐらいのときだから……柔道しかしてなかったよなあ、他は何も目に入ってなかった。
高校の全国大会出場をかけて戦って、もうちょっとのところで出られなかった、辛いシーズンだった。千葉も出られなくて、それで二人で決意を新たにしたんじゃなかったっけ?
そんなことを考えていると、机においたスマホがブブッと着信を知らせた。見ると西島さんだ。まだ昼休みもギリギリ終わってない。私はスマホを手に取り見ると、そこには『すぐ上に来て!』と書いてあった。
私は周りを見回してまだあまりみんな席についていないことを確認すると、立ち上がり素早く階段で一つ上の階のシステム管理部へと向かった。
もしかしたらちらっと佐伯さんを見られるかも! そんなことを考えながら廊下に立つと、すぐ目の前に西島さんがいた。そしてまたもや私をぐいぐいとトイレへと引っ張っていく。
「何!?」
私は驚いて西島さんに尋ねた。
「シッ」
またもや西島さんが声をひそめる。「見たの」
ドキンと胸が動く。なんの話かだいたい想像できる。何を見ちゃったんだろう。
「私、塩見さんが8階にいるの、見たの!」
「8階にいたって、別におかしくないよね」
私はほっと胸をなでおろした。だって同じ会社だもの、変じゃない。