瑠花さんはアイスを片手に、私に向けて手を差し出した。
私は勢いよく出されたその手を、反射的に握った。
「島谷紗知です」
よろしく、と言うように、瑠花さんは腕を振った。
井下と違って、元気で可愛らしい子だ。
本当、無愛想な兄に似なくてよかったよかった。
「おい、島谷。変なこと考えただろ」
「ううん、考えてないよ」
私は目をそらす。
……バレてるだろうな。
「ねえ、紗知さん。なんで兄貴と付き合ってんの?」
瑠花さんはアイスを食べきり、残った棒を井下に押し付けた。
井下は顔を顰めながら受け取る。
じゃなくて、瑠花さんも水口と同じようなことを。
「兄貴よりいい人、いっぱいいるよ?」
……意味は違うみたいだけど。
「たしかに。井下よりいい人、いっぱいいるね」
「だったら」
「でもね、私は井下がいいの」
……私、ものすごく恥ずかしいこと言った気がする。