「いるけど、なんで?」
須藤君は気まずそうにまた視線を逸らす。
「会ってみたいなと」
「……オススメしないよ?」
お姉ちゃんが須藤君を手下のように扱うのは目に見えるし。
「それでも、会ってみたいんだ」
やっと顔を上げた須藤君は、調子を取り戻したのか、爽やかな笑顔を見せてくれる。
うん、容姿は合格。
きっとお姉ちゃんも気に入ってくれる。
問題は、お姉ちゃんと須藤君の性格が合うかどうか。
……まあ、会いたいだけみたいだし。
いっか。
「わかった。お姉ちゃんに言ってみるよ」
「ありがとう、紗知ちゃん」
須藤君は私の手を握って、教室を出ていった。
「あの野郎……」
須藤君の行った先を見つめて、井下が不服そうにこぼした。
「井下?」
「……なんでもない」
なんでもないことはないだろうに。
……いいこと思いついた。
「ねえ井下、ヤキモチ?」
上目遣いを頑張ってやってみる。
我ながら……気持ち悪い。
井下はじっと私の顔を見る。
「ああ、そうだよ」
その言葉に、私が赤くなってしまった。
体温が一気に上がる。