井下はどうかわからないけど、私は、誰かを好きだっていう気持ちが、本当にわからないから。
すると、須藤君は深いため息をついた。
「わかった。降参する。今の君たちは邪魔できないみたいだ」
あんなに渋ってたのに、随分とまああっさりと。
嬉しい限りですけど。
「あーあ。僕にもそういう人現れないかなあ」
「結局羨ましかっただけ?」
須藤君は顔を赤くしてそっぽを向いた。
……いや、遅いよ。
「学年一のイケメンも大変だね」
「好きでイケメンやってるんじゃないよ」
「わかってる。女子の希望を叶えてる須藤君は、それだけで十分だよ。きっと、本当の須藤君が好きだって言ってくれる人、現れるよ」
須藤君はじっと私の顔を見てきた。
なにかついてるのかな。
「須藤。絶対に許さないからな」
「……わかってるよ」
井下が威圧したで須藤君は小さくなってしまった。
ていうか、なにを許さないんだろう。
どうせ聞いても教えてくれないんだろうけど、気になる。
「そういえば、紗知ちゃん、お姉さんがいるって聞いたんだけど……」
だけど、私が質問するよりも先に、須藤君に聞かれた。