あのやり取りから、二日が過ぎた。



「……井下さん」



昼休み、私にしては珍しく、ゲームをせずに井下に向かいあった。



「どうした」



それなのに、井下は本から目を離さずに答える。



それでも話を聞いてくれてるってわかってるから、井下から本を取り上げるようなことはしない。



「……あれどうにかしてくれませんか」



あれ。


言わなくても伝わるだろう。



須藤君だ。



もうとにかくしつこくて。



ちょっとしたストーカーみたい。



「イケメンに好かれてよかったじゃないか」


「全然嬉しくない」



私は頬杖をついて、ため息をつく。



ていうか、須藤君の場合、私のことを好きで付きまとってるわけじゃないと思うんだけど。



「イケメンだぞ?」



そうは言うけど、あれはイケメンなだけ。


そんな人に好きになられるよりも、私は……



「好きな人に好きになってもらうほうが全然嬉し……今のなし!」



なんて慌てて否定してみたけど、手遅れ。



「照れるな。俺もだから」



そう言う井下は、少し頬を赤くしている。



「……照れるなよ」