翌朝、私はあくびをしながら昇降口に入った。
昨日、あまり寝れなかったしな……
「紗知ちゃん、おはよう」
しっかり眠れなかった原因を作った須藤君だ。
「……おはよう」
胡散臭くて、少し引き気味に言った。
「今日も可愛いね」
ああ無理。
爽やかイケメンと思ってたのに軽いな。
「……どーも」
「あれ、信じてないね?」
そのわざとらしい演技を信じろと?
なんて、変なことは言えない。
「昨日の今日で信じられると思う?」
「そりゃそうだ」
本当にわざとらしく言うなあ。
呆れてため息しか出ないっての。
すると、私と同じようにあくびをしながら、井下が校舎に入ってきた。
「井下!おはよう」
須藤君から逃げたくて、滅多にしないけど、井下を大声で呼んだ。
「……はよ」
私の声に返してくれたのはいいけど、眠そうだなあ。
私以上に。
「紗知ちゃん、楓真には素直に言うね」
まだいたのか、須藤君。
「悪い?」
「悪いよ。その笑顔を、僕に向けてくれないんだから」
誰が向けるか、誰が。
「昨日の、本気だったのか」
興味ないのかはわかるけど、あくびしながら言わないで。