「僕は君と楓真を別れさせる」
「ごめん、なに言ってるの?」
今までの会話の中で須藤君の言ってることを理解したことはないけど、今回の発言が一番理解不能。
自分の声だけでも、そう思っているのが態度に出ているんだろうな、と思ってはいる。
……思ってるだけ。
「紗知ちゃんを手に入れたいと思っただけ……」
「あのさ、巻き込まないでくれる?」
須藤君の主張に被せるように言う。
どんどん冷たくなっていく自分の声に、少し驚く。
本を読んでいたはずの井下と、落ち込んでいたはずの水口も私のほうを見てる。
だからって、今さら引くことはできない。
「挑発してきたのはそっちだよ?」
須藤君は私が否定したことを不思議に思ったらしい。
挑発、ね……
「そうじゃなくて。証明するなら、ほかの人でもよくない?」
「でも君たちの付き合い方を否定できる、この方法が一番だと思ったんだけど」
なるほど。
つまり、手に入れたいどうこうは嘘なわけだ。
そして確かに、否定するにはいい手段かもと思ってしまった自分がいる。
もう、言い合いに付き合う理由もなくなったし、なにより疲れた。
「……好きにすれば」
だから、こう言うしかなかった。