初めて表情が崩れたのがこの話題とは。



まあいいけど。



「私は井下の隣にいられるだけでいい」


「島谷がずっと隣にいてくれることが、今の俺にとっての幸せだから」



それはほぼ同時だった。


須藤君はそんな私たちを見て、苦笑してるのか呆れて笑っているのかわからないけど、そんな笑みを浮かべた。



てか……今回はお互い様だよね。


お互いに、恥ずかしいことを言った。



だけど、体温が上がってる気がする。


さすがキザな井下。


勝てないや。



「……なるほどね」



須藤君は納得していないように見えた。



まあ理解してもらえたことないから、別にいいけど。



「僕はその付き合い方こそ違うと思うけどな」


「お前の価値観、押し付けんなよ」



井下の声が低かった。



でも、今回は怒る理由わかるかも。



わかるけど、いくら須藤君が嫌いだからって、睨んじゃダメだよ。



なんて、止めないけど。


私だって、嫌いだし。



「奏汰もそう思うか?俺もなんだよー。やっぱさ、好きな人といたら普通イチャイチャしたくなるってのに」



どうやらずっと廊下で私たちの会話を聞いていたらしく、水口が戻ってきた。