井下は本から視線を逸らさず、ページをめくりながら、真剣なトーンで言った。
「一生!?なんで!」
逆にどうしてそう言われないと思ったのか。
「水口はうるさいもん」
「島谷まで!」
ほらうるさい。
怒鳴らなきゃ聞こえない、なんて距離にはいないのに。
おかげで耳痛くなったし。
「三人は仲がいいんだね」
すると、須藤君は微笑みながら私たちを見ていた。
うん、爽やかだ。
「これのどこが、仲がいいと思うんだよお。俺いじめられてるんだぜ?」
水口がうなだれた。
須藤君は微笑んでいるだけで、なにも言わない。
そんな須藤君を見て、水口はさらにやさぐれる。
「……須藤君もイケメン枠だもんな。いるだけでキャーキャー言われる奴だよな。なあ須藤君、少し」
「奏汰でいいよ」
水口が文句を並べていたら、須藤君がそれを遮った。
男子はこうやって打ち解けていくんだろうなあ。
うなだれていたはずの水口は、須藤君の肩を組んだ。
「じゃあ俺は瑛斗でいいぜ。こいつは楓真な」
流れるように井下が巻き込まれた。
井下は顔を上げ、笑っている水口を睨んだ。