予定していた時間よりも早めに家を出て、歩いて待ち合わせ場所に向かった。
「……浴衣だ」
それでも洋服の井下には勝てなかったらしい。
井下は私の格好を見て呟いた。
「無理やり着せられました」
せっかく楽しみにしていたのに、少し憂鬱になってしまう。
「そっか。似合ってるよ」
「……ありがとう」
……前言撤回。
なんだろう、可愛いって言われるより嬉しいかも。
「どうする?なにか食う?」
「そんなにお腹空いてないんだよなあ……」
まだ五時っていうのあるけど、浴衣着てるせいでもあるんだよ……帯のせい。
「じゃあ祭りらしく、かき氷か」
「賛成」
今日もう食べたけど、夏だし。
何回も食べたいじゃん、かき氷。
「兄貴!紗知さん!」
かき氷屋の列に並んでいたら、瑠花さんが焼き鳥片手に駆け寄ってきた。
「瑠花さんも祭りに来てたんだね」
「瑠花さんー?呼び捨てでいいよ」
そんなに嫌そうな顔しなくても。