「紗知、今日の夏祭り行くの?」



夏休みに入って、涼しいリビングでかき氷を食べていたら、お姉ちゃんがたたまれた布を持って入ってきた。



……まさか。



「浴衣は着ないからね」



お姉ちゃんは毎年のように、私に浴衣を着せようとする。


高校時代に文化祭で浴衣の着付け係をやって以来、浴衣を着せることの楽しみを覚えたらしく。



でもなかなか浴衣を着せる機会なんてない。


だから、私が被害者となる。



「またまた照れちゃって。で、誰と行くの?」


「……友達と」



彼氏なんて言った日には、確実に浴衣を着せられる。



「そっかそっか、彼氏とか。じゃあなおのこと、浴衣でしょ」



友達って言ったんですけど!?


……もういいや。



「嫌だって。浴衣動きにくいし」


「慣れれば大丈夫」



毎年着てるから慣れてるのは慣れてる。


でも、着たくない。



「それに、向こうが浴衣とは限らないし」