パスカットをした水口は数回ドリブルをし、ゴール近くにいる井下にパスした。
それをしっかりと受け取った井下は、シュートを決めた。
水口が肩を組むが、冷たく払ってる。
「待って待って、井下君イケメンかよ!」
「普段全然目立たないし、島谷さんといるから気付かなかったよね」
気付かなきゃよかったのに、なんて思う私は、心が狭いのかな。
「楓真くーん!頑張れー!」
「かっこいいー!」
すると、隣から黄色い声援が飛んだ。
どんどんモヤモヤが大きくなっていく。
「井下君株上がってるー」
千坂さんの言葉で、限界が来た。
これ以上、井下への歓声を聞いていたくなかった。
「あれ、島谷さん?彼氏の活躍、見なくていいの?」
千坂さんは私が逃げようとしたところを引き止めた。
「……うん」
「応援するって、言ってなかった?」
そこまで聞いてたとは。
「……もういい」
たしかに言ったけど、それはあとで謝ればいいかな……