カバンとか持ってたのに、あっという間に姿が見えなくなった。
「今バスケ部のエースらしい」
井下は近くにあったゴミ箱に、棒を捨てた。
バスケ部かあ……
なるほど、速いわけだ。
「って、エース!?」
「ああ。ちなみに、あれは中三」
二つ下だ……!
にしては背が高かった。
私と目線が同じ……か、少し上。
羨ましいなあ。
「おい、楓真!瑠花ちゃんのタイプは!?」
水口は井下の両肩を掴んだ。
井下の顔、すごく死んでる。
嫌なんだろうなあ。
「その質問、もう何度も聞いた。落ち着いた奴って言ってるだろ。瑛斗と真逆なんだから、いい加減諦めろ」
うん、いつも以上に冷たい。
「役に立たねえ兄貴だな!少しは俺のいいところ言うとかしてくれよ!」
水口がそう言った瞬間、井下は水口のみぞおち目掛けて拳を振った。
それは綺麗に入り、水口は背中を丸めた。
……同情の余地なし。