「ナギは?何をしてるの?」


という質問に、ギンとセンリは黙ってしまった。

ありゃ、聞いちゃいけなかったの?


するとギンが


「あいつあんなだろ?本分は学生だけど行ってねえし、何処の仕事を手伝いに行かせても役に立たないらしくて。
掃除業者とか配達とか行かせたんだけど、仕事先怒らせちまうから今は家の畑仕事」


「え・・そうなんだ」


「まあ、畑はちゃんとやってるからそれが性にあってるのかも知れないけど」


とセンリがフォローする。


「今15才だからな。あと3年もしたら俺の警備隊に配属しようと思ってる」


「・・・」


私はナギの捨てられた子猫みたいな顔を思い出した。

辛そうな顔。きっと何かあるに違いない。


「あの。変な質問だったらごめん。皆の家族は?両親とかさ、いないの?」


「・・・」


この質問にはカサネも暗い顔をした。

そして優しい顔で


「ヒオリん。この時代では、結構親の事知らなかったり色んな事情を抱えてる人が多いわ。デリケート部分なの」


「は、はい・・」


いや、ヒオリんて。

まずこそこをツッコませてほしい。

けど、グッと堪えよう。なんだかシリアスな雰囲気になったから。


そんな空気をいとも簡単に壊したのはギンだ。


「いやいや、別にねえよ。俺の親父は戦死だし。センリのとこは病死だっけ?」


「ああ」


「母親は国の役目で幼い頃からすでにいなかったし。てかこれが普通だから大したことじゃねぇよ」


「そ・・そうなの?」


私は内心沸々と湧き上がる何かを感じていた。


きっと違和感。本当は、家族一緒に暮らせたらそれが一番いいと皆も本能でわかってるハズなのに。

当たり前だからって諦めて言い聞かせているんじゃないのだろうか?


「基本的に母親は薄い存在だから。気にしてない」


とセンリは言う。


嘘・・・だって男の子程母親にべったりだったりするじゃん。

皆、これが普通で平気だって思うの?



「ナギは・・」


「それは・・」


センリは言いたくなさそうだ。


「詳しい事は言えないけど、拾ったんだ」


「え!?」


やはり一番のデリケートゾーンだったか。


「東西の国境近くでだったよな?ある日の夜にギンが連れてきた」


「だから、俺達が親代わりってやつだな」


「そか・・ごめん。言いずらい事聞いちゃって」



この世界の事を聞けば聞くほど、落ち込む自分がいる。

皆、過酷の中でそれを普通と思って生きている。

それが私の脳内をモヤモヤさせ続けた。