「ところで・・・ギンさんのお話なんだけど」


ドキン


「え?」


ツムギさんはにっこり笑いながら直球を投げてきた。


「数日前のあの日ね、すぐに南の国へ向かったらしいわ」


「え!?」


なんで!?


「先日の研究所を襲った一味は南の国の者って言うのは知ってる?」

「あ・・はい」

「でね。ギンさんは南の国の様子を見に行ったみたい」

「え!?危険じゃ・・」

「ええ」


ツムギさんは真剣な表情で頷く。


「アサギの所属していた部隊だったから、アサギの情報をもとに探りに行ってるって」


「なんでですか!?なんの意味が・・」


「んー・・ヒオリの為じゃない?」


「・・・・・え?」


理解が出来なかった。


なんで私の為?


だって私はギンに愛想つかされたんだよ?


ツムギさんは私の肩をぽんと優しく叩いた。

励まず様に。悟れと言わんばかりに。


「冷たくあしらっていったみたいだけどね。演技だったんじゃないの?」


「へ?そんな・・そんな訳ないです。だって・・あの目は本気の目だった」


「決意の目だったんじゃない?」


「は・・・?」


嘘だ。

信じらんない。

今の私には到底受け入れられない話だった。


だって、本気だったんだよ。

本気で私を疎ましい感じで睨んで去っていったんだよ。


「意味、ないよ。それが本当だとしても・・」


「ヒオリちゃん・・」


「だって、そんなの意味ない。・・私はギンと一緒にいられればそれで良かったのに。あんな態度」


仮に私の為だとしても、解りやすく説明してから行ってよ!

それが優しさじゃないの!?

あんな別れ方・・。

あんな苦しい思いは嫌だ。