廊下を小走りしていると、遠くにアサギさんとイタルさんが見えた。

何か会話してるみたいだ。


ギンの事・・かな?


未練がましくも気になってしまう。

だってまだギンの事を考えるだけで胸がチクチクする。

息が出来なくなる。


「あ、ヒオリちゃん」


「ヒオリ」


二人は私を見つけるなりいつも通りに声をかけてくれた。


「あ・・どうも」


素っ気ない返事の私を見て、二人はちょっとだけ眉をしかめたみたいだ。

気まずい。

この二人はギンと仲がいいんだから。

きっと今も。



「ヒオリちゃん何処行くの?」


「ええと・・ちょっと外の空気を吸いに」


変な答え方をしてしまった。

今更だけど、私って相当痛いヤツなんじゃ・・。


「外って?」


「えっと・・庭とか?」


嘘です。

行く当てなんか全然ない。

ただ一人になりたくて部屋から飛び出してきただけだから。


「ヒオリ」

たじろいだ態度をアサギさんが見透かしたのか、私の手を取った。


「な、なんですか?」


「・・ギンの事、許してやって」


「え?」


許す?何を?


イタルさんは頭をかきながら申し訳なさそうに低いトーンで言った。


「あいつ、すぐ感情的になる馬鹿だから。ヒオリちゃんの事傷つけたろ」


「・・え?あ、いえ・・」


私は後ずさった。

だって、そんな風に、身内みたいに言ってくるイタルさんが、何かを察して心配してくれてるアサギさんが、、、




羨ましいと思ってしまって。



「・・醜い」


自分が汚く見えて仕方ない。

そんな目でこの二人を見てしまった。

消えたいわ。今すぐに。