俊敏に、アサギは大地を蹴った。

ユウギリに噛みつこうとしたがそれを紙一重でかわされる。


「変わってないわね。一年前と。遅い遅い」


とユウギリは余裕の笑みを浮かべ続ける。


「ぐっ」


わざとすれすれの所でユウギリは体を逸らし、アサギの喉へと食らいついた。


「引きちぎるけど、死んじゃ駄目よ?もっといたぶりたいんだから」


「ぐああっ」


アサギの首をかみ砕こうとした瞬間にユウギリは止まる。


「何?」


アサギがオオカミの姿を人間に戻し腰につけている剣でユウギリの足を刺し突らぬいた。


「んぐっ・・」


「剣を・・甘く見るな」


「痛いわねぇ・・・死になさい」


「!!」



と、その時だ。


大蛇がユウギリの首の隙間を通り体を締め付けた。


「なっ・・」


そして猫がその鋭い爪でユウギリの目をひっかいた。


「ぎゃあっ」


アサギはその場に崩れ落ちる。


「う・・二人とも・・」


「アサギここは任せて!」


「駄目だ・・逃げろ」


「なんでこいつチョーよわじゃん」


「馬鹿・・」


とアサギが見上げた瞬間にツムギとクレハが宙に舞った。



「えっ」


ユウギリがツムギとクレハを力で吹き飛ばした。


「やってくれたわね。3人がかりで卑怯極まりないわ」


「うぐっ」


「はぐっ・・」


ユウギリはその鍛えられた脚力でクレハの腹を蹴り、ツムギを掴んでぐるぐると回し始める。


「大蛇と猫、どっちも絶滅危惧種ねえ。終わらせてやるわ」


「ユウギリーーーーー!!!」


アサギは痛みを凌駕し、オオカミにまた姿を変えるとユウギリの首に噛みついた。


「死にぞこない・・殺せるの?あんたが私を」


「やる・・」


「よく言うわ。いつもギリギリの所で負ける癖に。あんたが優しいばっかりにね」


「まけ・・ない!!」


「へえ・・」


ギラついたアサギの目を見て、ユウギリはゾクリと身体を震わせた。

そしてアサギとツムギを放り投げる。


「そんな必死な顔、初めて見たわ。嬉しい」


「・・・」


ユウギリにそう言われ、アサギはつい力を抜いてしまった。

アサギも初めて見るユウギリの表情だった。

目を潤ませて嬉しそうな顔だ。


「でも、やっぱり駄目ね」


ドカッ

と鈍い音と共にアサギは吹き飛んだ。