階段を上ると、その部屋に天井は無かった。

野球が出来そうなくらい大きな部屋の上に空が見える。

そして目の前にはその部屋のサイズ匹敵するほど大きな装置が部屋いっぱいに置かれていた。

ど真ん中に置かれている鉄の様なもので出来た大きな輪の機械。


時空転送装置。


「こりゃ・・飛んで入った方が早かったな」


「それは出来ない」


「なんでだ?」


ギンの問いにセンリは機械を確認しながら答えた。


「見えないだろうが、最新の防弾ガラスで覆ってある。誰も割る事は出来ない」


「へえ・・」


「レーザーでも焼けないハズだ」


センリは装置の近くにある小さなパソコン達を確認する。

起動装置だ。

ホコリが被っている。


「最近使われた様な形跡は無いな」


「マジかよ」


ギンも覗き込むがセンリの言った事は正しそうだ。

ホコリに触ると指の後が付いた。


「俺がヒオリを呼び出したのは・・大体2か月前くらいか」


「ああ」


「使っているとしたらココしかない。俺はここ以外に装置のありかは知らないからな」


「ああ、前に言ってたぜ。死ぬ前に」


「・・うん。それから誰かがこここを使った形跡がない」


「じゃあやっぱり・・」


その場にいる全員が固唾を飲んだ。



「ヒオリ以外は、もう一台の方の装置で呼び出されたんだろう」


「・・・そうか」


ツムギがセンリに近づく。とても真剣そうに。


「この装置でツカサを帰す事は出来るのね?」


「出来るとは断定できない。そうだな、俺がここで研究していたとすると・・何処かに書類があるかもしれない。
きっと、やり方を導きだした時に書き留めるだろうし」


センリの視線が差す方向に大きな本棚があった。


「ありそうか?」


「とりあえず探してみよう。本棚を」


皆で一斉に本棚に向かった。


ギンは首を傾げている。


「そんな大事なもん、ここに保管しとくのか?」


「うーん・・なんとも言えない。悪い。記憶がないって・・本当に辛いな」


「・・だな」


「でも、可能性としては・・ヒオリを呼び出した後にまた他の誰かを呼び寄せるつもりだったんなら」


「あるかもしれねえか」


「うん、そうだ。家にあった書類にめぼしいものは無かったしな」


本棚の書類は山の様にある。

めぼしい物を手当たり次第に抜いていった。