まっすぐ廊下を駆け抜け、何処へ行ったらいいのやら路頭に迷う。

ひたすらに自分の脳裏に浮かぶさっきのシーンを消そうとした。


嫌だ。

気持ち悪い。

吐きたい。

酔いが醒めたと思ってたのにぐるぐると目が回ってきた。

日本酒は走っちゃ駄目ですね。


「ヒオリ?」


ドン


と今度は聞き覚えのある声の人とぶつかった。


「あ・・あ・・」


「どうした!?何があった!?」


よろめき倒れそうになったのを支えてくれたのはトキワ様だ。


「迎えに行こうと思っていたんだが・・」


「あ・・」


ヤバい。


声が出ない。

誤魔化したいのに。


「泣いているのか?」


とトキワ様が私の涙を指で拭った時、後ろから必死な声が聞こえた。


「トキワ様っ」


ドキッ

私の心臓は跳ねあがる。


「ギンか、どうした?」


「・・・ヒオリをこっちへ渡してもらえませんか?」


「何?」


ギンのドスの聞いた低い声を聞き、トキワ様は対抗する様に私を抱きしめた。


「・・・ヒオリは嫌そうにしているが?」


顔が歪んでしまっているはもちろんお見通しで。


「渡してください」


「・・・」



二人は睨み合った。