6階のバルコニーからの景色はとても良かった。

城の周りには巨大な木々もあるが、遠くに見える都市のビルは私達の時代を思い出させる。


ツカサさんは懐かし気な顔をしてる。


「東京みたいだな」


「ですね・・あ、ツカサさんてもしかして東京在住でしたか?」


「ああ。ヒオリちゃんも?」


「はい!一人暮らししてました」


「そうかー」


こんな知らない世界に、同じ世界の人間がいる。

それだけでほっと安心する。

不謹慎だけど、独りじゃなくて良かったって思ってしまう。




「ここってそのトウキョウっていう場所なんじゃねーの?」


「あ、なるほど・・」



ナギに言われて納得した。

前にセンリが渡してくれた歴史書には地図も載っていたけど、文字は解らないし、隕石が富士山に直撃したせいか地形もだいぶ変わってしまっているから。

東京という概念すらなかった。


「東の国だもんな」


「ここ、東京かもしれないんだね」


懐かしいな。

平凡な毎日。

月一の飲み会が唯一の楽しみな私だったな。



「ヒオリちゃん」


「え?」


「今帰りたそうな顔してた」


「ええ?ホントですか?」


「うん」


ヤバい、マズイ。

そんな顔ナギに見られたら大変なのに。


ちらりとナギの顔を横目で覗く。

ナギは手すりに腕を乗せちょっとだけ不貞腐れた顔してた。


「ち、違うよナギ」


「は?違わねーだろ」


アウトでした。