私を知る前のセンリなんだね。


「あの・・・センリ」


私の馴れ馴れしい呼び方に、どうやら躊躇しているみたい。


ビクついたセンリは新鮮だった。

本当に他人みたい。


「私はセンリを恨んでないよ。そりゃ、初めてセンリがやったって聞いた時は気が狂いそうだったけど、今は恨んでない」


「・・・」


目を合わせてもくれない。

目を閉じている。


私は更に牢に近づいて、鉄格子を握った。


「センリやギンやナギに逢えて、楽しい生活を送ったの。今は過去に帰りたいとも思っていないし」


「は?・・・何故だ?おかしいだろう。無理矢理連れてこられたのに」


「うん・・おかしいね」



過去の時代に未練がないわけじゃない。

でも、今は目の前の事に向かっていくのがやっとなんだもん。

みんなに甘えているのも自分でわかってる。




「お前を連れてきたのが俺だとしたら、恨みしかないハズだ」


「ううん。だって私センリの事好きだったもん」


「・・・・」


その言葉に少しだけ反応してくれた。

ちょっと嬉しい。


「あの生活が嘘だってわかった時は、すごくショックだったけど・・でも、やっぱりセンリが好きだった」


「悪い。信じられない」


「あ、ごめん・・・」


シャットアウトされた。

そりゃそうか、いきなり身に覚えのない事言われてもね。

勢いありすぎた。


一旦落ち着け私。