「ヒオリ様ーーーーー!!」


「シズクちゃん!」


私がお城に到着すると、泣きながらシズクちゃんが走ってきた。


「ご無事でなによりです!ずっとずっと心配をしておりましたあぁあ」


私の手を熱く握りしめてきた。

ちょっと驚いた。


「ご、ごめんね心配かけて」


「攫われたと知った時には、もう発狂しそうでした」


こんなキャラだったっけシズクちゃん。

私が困っていると、それを後ろからナギが不思議そうに覗いている。



「わたくし、攫った者を絶対に許しません!ヒオリ様を危険な目にあわせるなんて!」


可愛い顔をぷりぷりとさせている。

シズク目線ではそうなっちゃうよね。

私を攫った本人がココにいますけど。

言わないけど。


シズクちゃんの発言を聞いてナギはすぐにブスっと顔を膨らませた。


「攫ったんじゃねーっての」

「わっ。面倒だから絶対言っちゃ駄目」

「ちっ」


不機嫌王子め。


「ささ、ヒオリ様。美味しいお菓子をご用意いたします。お部屋にどうぞ」


とても嬉しそうにシズクちゃんは涙を拭っている。


「あ、と・・ちょっと待ってシズクちゃん」


「え?」


「紹介するね。ナギ」


「・・・」



ナギがジッと睨んでいる。

子供にも容赦ないのかあんたわ。

というか、どう挨拶したらいいのかわからないのだろうか。

時間が止まっている様な錯覚に陥るくらい何もしゃべらなかった。

私は耐えかねて口を開いた。


「ナギ?」


「俺は西のやつと仲良くするつもりはねぇ」


はい出ました。

まったく相変わらずの反抗期なんだから。


「えっと・・」


案の定シズクちゃんが戸惑っている。


「気にしなくていいよシズクちゃん。行こう」


「え・・あ、はい・・」


面倒なので放っておく事にした。