病室は小さな個室で、カサネさんは包帯が全身に巻かれていた。

不幸中の幸い顔は傷つけられていなかったので無事だ。

私達は静かに入って、静かにカサネさんの顔を覗き込んだ。

もちろん無言だ。


「・・・」


人の気配を感じ、カサネさんは閉じていた目をゆっくりと開けた。


「カサネ・・」


ギンと私達を見つけると、ふんわりと笑顔になった。

嬉しそう。


「良かった・・」

「うん」


ギンとナギが頷く。


「ヒオリ、カサネはしぶといからきっとすぐに傷も良くなるぜ」


「ぅん・・」



私の表情が曇っていたのでカサネさんはすぐに何かあったんだと悟った。

勘もいい。一発でセンリの事だとわかったのだろう。


「ヒオリ・・どうしたの・・・」



辛そうなのに、私に声をかけてくれた。

その言葉に、私は枯れ果てたハズの涙を呼び起こした。


私なんかより、カサネさんの方がずっと辛いのに。



「・・ううん。なんでもない。カサネさん早く良くなって」


「ええ。早くギンに抱き着きたい」


「うんうん。もう一生抱きついていていいから」


と私は元気になってもらいたくて無理を言う。


「ちょ、お前なんて事を・・・」


とギンは慌てふためいたが、言葉を正した。

照れくさそうに咳ばらいをする。


「コホン。カサネ、ほんとにありがとな。ていうか、こんな目に合わせちまって・・後悔してる。
やっぱりお前に頼むんじゃなかったって」


「私はギンの力になれて嬉しかったのよ」


「だけど、こんな・・・」


ギンはさっき先生が言っていた足の事を思い出した。

そして痛々しい身体を見つめる。

言葉を失ったギンに、ナギは小突く。


「おい、責任とってカサネの言う事なんでも聞けよ」


「あ・・ああ。とりあえず一週間ほっぺにチューしてやるから。約束だしな」


「うふ・・・嬉しい。唇にもお願いね」


「それは・・」


「おい」

とナギはギンの否定を遮った。


「一回・・だけな」


「わお・・早く治らないかしら・・楽しみすぎ」


「ナギめ・・」


良かった。カサネさんが無事で。

本当に良かった。




私は椅子に座って3人を見つめた。

いつもの会話を聞けて、ようやく心を取り戻せた。

何よりカサネさんの笑顔が癒してくれたんだ。