「きゃああああっ!!!」


と外から悲痛な叫びが聞こえ、その声に身体中がしびれた。

痛々しい叫び。


この声は!!


「カサネさ・・」

「し、静かに」


ギンは私の口を手でふさぎ、動揺を落ち着かせてくれた。

ヒソヒソと小声で話すしかない。


「どうしよう・・カサネさんが・・」

「・・今は耐えるしかない。何か策を・・」

「ギン・・」


そう話している間にもカサネさんの悲鳴は続いた。


「きゃあああっ」



ギンが悔しそうに震えてる。

怒りで震えているのかもしれない。


でも・・どうしてここがバレたの?なんで?


と、私達が躊躇しているとセンリから話を切り出してきた。



「ヒオリ、お前が出てこなければカサネは死ぬぞ。もう虫の息だ」


!!!


「ヒオリん・・駄目・・よ」


私がテントに身を潜めている時、カサネさんは手足を縛られナイフで体に傷をいくつもつけられていた。

センリはカサネさんの悲鳴をダシにしている。


「ギン、ナギ、いるのは解っている。出てこい、取り引きをしたい」


ドクン


ドクンドクンドクン


全身が心臓になったみたいだ。


センリは続ける。


「カサネは解放してやる。だからヒオリをこちらへ渡せ」


わかりきった取り引きだ。

ギンとナギの顔に汗がにじんだ。


さらにセンリは続ける。


「ヒオリ、トキワ様はお前を酷い目に合わせたか?いたぶったか?違うよな?優しかったよな?」


ズキン


確かに王は私に優しかった、酷い事はされていなかった。



「今後もそうだ。お前が傍にさえいてくれれば・・それだけでいいのに」


私さえ、王のもとに行けば・・・カサネさんは助かる!

と、私は生唾をゴクリと飲み込む。


「ヒオリ」


すると私の行動をわかりきっているのか、ナギは私の手を握る。


「馬鹿、お前薬飲まされて騙されてただろうが。俺達を忘れさせる薬を」

「ナギ・・でもカサネさんが」

「王が優しい?だったら嫌がるお前を知らん顔して自分の妃になんかするかよ」


ナギの言葉はしっくりきた。

確かに私が嫌がるなら解放すればいいだけだ。

だけど、薬の事を知りつつも王は私を・・。



「行くな。駄目だ」


「・・・ギン・・ナギ・・」


二人は手を放さなかった。


そしてそれを見たツカサさんとクレハちゃんは同時に頷いた。


「俺達が出るよ」

「え?」

「状況を見てくる。そろそろ丁度ツムギたちが帰ってくる。上手くいけばセンリを捕まえられるかも」


と立ち上がる。

潔く、ツカサさんはテントから出て行く。

クレハちゃんと共に。


ギンは自分を抑える様に唸った。


「すまねえツカサ・・頼む・・」