そんな視線に気が付くはずもないギンとアサギの会話はこうだ。


「もう少しでぶつかるところだったな」


「ああ、すまない」


「初めは飛び出すキャラじゃなさそうに見えたけど?」


ギンが道を歩いていると、突然曲がり角からアサギさんが飛び出してきたのだ。


「・・・ちょっと、喧嘩してな」


「喧嘩?ツカサと?」


「いや・・ツムギとクレハと」


「なんだそりゃ」



ギンは郵便ついでに買ってきた炭酸水を飲みながら笑った。



「ツカサを一番に思っているのは私だから」


「何それ。・・なんでそんなに好きなの?あの男イケメンでもないし超普通な感じだけど」


「ツカサは、私達を特別視しない。私はもう女として不要だと政府に言われた女だ。
このバッチだってツムギのとは違う・・こんなの屈辱的な証以外何物でもない」


「まあ、確かにな」


「こんな女だって出会いは欲しい。だが、これがある限りは色目で見られる。
だから強くなりたいと願ってきた」


「・・・」


アサギは腰に差している刀を握りしめる。


「女だというだけで酷い目に合う。なのにツカサは言ったんだ。関係ないって。
子供が出来ようが出来まいが、好きになったら関係ないだろうって」



とても嬉しそうにアサギさんは家を見つめる。

きっとツカサさんを見ているんだろう。

キラキラと目を輝かせている。


「私が初めて出会った、世界で一番イイ男なんだ」


「・・・そうか」


「だから、ツカサが帰りたいと望むのならそれを私は叶えてやりたい」


「いいのか?一緒にいられなくて」


「いたい!でも、ツカサが望むから」


と切なそうに笑った。


「お前なら、他に男はいくらでも選び放題だろうに」


「私はツカサがいいんだ」


「へいへい。じゃツカサがいなくなったら貰ってやろうか?」


「は?ふざけるな、お前はタイプじゃない」


「はああ!?冗談に決まってんだろ馬鹿女!俺にだって好きな女いるっての」


「なんだと!?馬鹿とはなんだ馬鹿とは!!」


「ぷ・・ハハハ」


「ハハハ」



ギンは笑った。

きっと楽しかったんだ。

同じ様な境遇の人を見つけて。



私は何故かチクチクと胸が痛んでしまった。

ギンが他の女の人に惹かれるのは全然いいと思ってた。

なのに、痛いのは何で?



何を話しているのかなんて分かるハズもない私は、ただ楽しそうに笑っている二人を見て軽い嫉妬をしてしまったみたいだ。

ワガママだ。