私はむしゃくしゃして家の外にある広い庭に出た。


可愛らしい薔薇が咲いている。


「はぁ。なんでこうなっちゃうかな・・」


ナギの馬鹿。

あんな事言わなくたっていいじゃん。

私だって、恋に破れて傷心なのにさ。

今でもセンリの顔を思い出してしまう。



「ヒオリちゃん・・?」


びくっ!


「び、びっくりした」

「あ、ごめんごめん」


背後から現れたのはツカサさんだった。


「あれ?他の人は」


「うん、なんか喧嘩してた」


「え?」


ツカサさんは困ったように頭をかいている。


「原因は俺みたいなんだけどね。近寄れなくて」


逃げてきたのか。

思わず笑った。


「フフ・・」


「え?」


「あ、ごめんなさい。うちと似てるなと思って・・」


「あ、そか。そうなんだ?」


「自分で言う事じゃないんですけどね」


薔薇の前でしゃがんでいる私の横に、ツカサさんはしゃがんで同じ目線になってくれた。


「毎日同じ様な喧嘩ばっかりで」


「わかる。小さい事でな。張り合って」


「うんうん」


「ヒオリちゃんはこの時代は重宝されるもんな。やっぱ女のコだし」


「ツカサさんは特別ですよね。3人の女子からモテるなんてそうそうないですよ?」


「まあ、今更モテ期が来てもって感じだよ。しかもこの時代でなんて」


「アハハ」


困っている様で少し嬉しそう。

それは私も同じだった。

私を必要としてくれるなんて純粋に嬉しかったもんね。