「何かご存じではないですか?」


と真剣な眼差しでツムギさんは聞いてきた。


「えっと・・・」


私なんか逃げるのに必死で、そんな風に考えてもなかった。

目の前の事にしか目を向ける事が出来なくて。


戸惑った顔をしていた私を、ギンは庇うように後ろへ隠した。


「悪いが、何も知らねえ。こいつも被害者だが・・その手がかりは掴めてない」


「・・・そうなんですか?」


「はい・・」


私はギンの後ろから返事をする。


「私もつい最近、一か月くらい前にここへ飛ばされて、何がなんだかわからない状態で」


「そ、そうですか」


とツムギさんは残念そうに首をもたげた。


「あ、でもセンリなら・・」


「馬鹿ヒオリ。言うな」


「え・・」


ひそひそとギンは私に口止めをする。


「ややこしくなるぞ」


「で、でも・・」


この人だって困ってる訳でしょ?

帰りたいって一年前から思って必死に探してるんだよね?


ツカサさんを見ると、残念そうに床を見つめていた。


「はぁ・・」


と重いため息をついている。