無事に城から逃げおおせたギンとナギとカサネは、都から離れた小さな町で休憩を取っていた。

公園の木の下で。



「ちくしょ・・何が起きてるんだ!」


ナギはケガをしていると言うのに怒りが収まらず、体に力が入りっぱなしだ。


「ナギ、今は休め。身体にさわる。お前が動けなくなったら逆に困る」


「わ、わかってるけど・・」


「ふう・・」


とギンはため息を落とす。


「ここからどうやってヒオリを助けるか、だな」


「ああ。でも・・俺達の事を忘れている様だった。信じられねぇけど・・」


「怯えてたもんな。俺達を見て」



残念そうに頭をもたげる。


「忘却草・・じゃないかしら?」


とカサネが言った。


「何それ?」


「取り扱いが難しい薬草。もしかしたらそれを飲まされたんじゃない?
私達を忘れる様にって。あの薬草は記憶を無くす事に有効だから。
医学的には少量しか使わない危ない薬よ」


「あんだと!?許せねぇ!」


ガンッ!!

と近くにあった木を殴った。


「ギンもちょっと落ち着いて」


「・・・わりぃ」


ナギは悔しそうに唇をかみしめる。


「もう、俺達の事は完全に忘れたって事か?」


「・・どうかしら。この間捕まってそれから飲まされたとするとまだ望みはあるかもしれないわ」


「なんでだ?」


「要は連続で飲ませなければ効力はなくなっていくハズ・・
飲むのをストップすれば記憶はよみがえるんじゃないかしら?」


「くそ・・でもどうやって・・」


するとカサネは立ち上がってウインクした。


「私が行ってくるわ」


「え?あぶねぇよ」


「私が侍女に化けて、ヒオリの食事に注意する。それでちょっとずつ」


「あぶねえって・・さっきのでお前の顔バレてるだろ?」


とギンが強く止めにかかったのでカサネの目はハートマークになった。


「ギン・・嬉しい私をそんなに心配してくれて」


きゅんきゅんしている。


「そ、そんなんじゃねぇけど・・お前に助けられたしな。
お前が捕まったら戦力が減る」


「ギン。だいしゅき~!!!」


「うっせ、今は馬鹿やってる暇はねぇっての」


抱き着こうとしたカサネの顔を掌で押さえた。