その頃、ナギは医療処置室を抜け出していた。

壁づたいに重い身体にムチを打つように。

奮い立たせ。


「はぁ・・はぁ・・ヒオリ・・待ってろ・・」


「これは・・イザナギ様!?そんなお体で!!」


警備兵に見つかった。駆けつられてしまった。


「うるさい・・邪魔だ。俺は・・兄貴に」


と言った時には体が崩れ落ちた。


くそ。力が入らねえ・・麻酔打ち過ぎだっての・・


「お戻りください」


「るせぇ!離せ」


何としてでもヒオリは助けないと。

俺の失態は俺が・・



「その手を離せ」


「・・・!」


聞き覚えのある声が背後からした。


「ギン・・」


ギンがナギの腕を掴み、肩を抱いた。


「ギン隊長、こちらへ」


と警備兵が促すがギンは反対方向へと向かう。


「ギン隊長!?」


「お前ら仕事に戻れ。俺が王子をお連れする」


「しかし処置室は・・」


「いいからいけ!」


「は、は!」


警備兵2人はギンの怒鳴り声に驚き戻っていった。



「お前、何?ケガしてんの?」

「ヒオリを。庇った・・殺されそうになって」

「マジで!?」


歩きながらナギは一部始終を説明した。


「ヒオリ・・あんな性格だから・・もしかしたらもう殺されてるかもしれねえ・・」


「馬鹿!変な事言うな」


「だって・・あいつ兄貴の怖さ知らねえくせに歯向かっていったんだぜ」


「それはかなりマズイな・・・とにかく急ごう」


「ギン、いいのか?」


「・・・・」


ギンは黙りこくった。

そして

「なあ、惚れた女の為に死ぬってかっこいいかな?」


と目をギラつかせて言う。

その問いにナギは微笑する。


「・・・まあ、俺が先にやってるけどな」


「お前・・ハハ。なんでも先取りしやがってクソガキの癖に」


「ふん・・」