「凄いマンションだね」
「俺の人生と引き換えだから
こんなもんじゃねぇか?」
そう言ってクスっと笑った柊
「人生って・・・」
そんな大袈裟なことなのかと思ったら
「家元を受ける条件にした」
そう言って笑ったから
大袈裟でもなんでもなかった
ガラステーブルの上に置かれたマグカップは
私の大好きなブランドのロゴマークが入っていた
「これ、彼女の趣味?」
ロゴマークに触れながら深く考えずに
ポツリと出した言葉に
「あ"?」
瞬時に反応した柊の表情は
背筋が凍りそうになるほど冷たかった
「・・・えっと、ごめん」
何に対してなのか上手く答えられないけれど
咄嗟に【謝る】ってキーワードしか浮かばない
「見くびるんじゃねぇ」
更に怒りを孕む視線も投げられて
石化寸前の涙目の私に
「この家に女は入れたことない
それに・・・
彼女なんて特定の女も作ったこともねぇ」
そう言って隣に座ると
固まる私の肩を抱いて
「花乃はお仕置きだな」
スッと目を細めたまま口元を緩めた
「きゃっ」
ソファに座ったままでサッと横抱きにされた
「・・・えっと」
もの凄く恥ずかしい体勢なんですけど
焦って横抱きから起き上がろうとするけれど
全く動けない
「よく、聞いてろ」
間近で合わせられた視線が強すぎて
コクコクと頷くしか出来なかった
「7年前のあの日、花乃に一目惚れしてから
ずっと、ずっと好きだったんだ
間違いなく俺の初恋・・・
拗らせてるけどな」
そんな・・・
「女と一度も付き合ったことねぇ」
聞いた話と違う・・・
頭をよぎる想いが届いたのか
続く答えは
「彼女は居なかったけど
不自由はしなかったな・・・
誘われたら断らなかったし」
期待を裏切らないタラシ発言
「顔も名前も覚えてねぇ・・・けど
相手も俺のことを好きじゃねぇ
外見と長谷川のネームだけにつられただけ
俺が欲しいのはずっと花乃だけだった」
不自由しなかった発言に
ざわついた胸が一瞬で凪いだ
そして・・・
ずっと想ってくれていたことを
嬉しいと思った
「俺の人生、花乃だけで良い」
そう言い切った柊は
「俺の初の彼女だな」
そう言って笑った
「彼女だったんだ・・・」
心の声がダダ漏れの私
「あ"?」
もちろん臨戦態勢の柊に
「だって、付き合ってって言われてない」
中学生か!と突っ込まれたっていい!
だってそこが引っかかるんだもん
頰を膨らませた私を見て
くくっと笑った柊は
コホンと小さく咳払いした後
「小柳花乃さん、俺と付き合ってください」
真剣な表情を作った
「・・・はい」
何とか声を絞り出すと
これでもかって程頰を緩めた柊は
痛い程抱きしめた
「・・・っ」
痛すぎるっ!もがく私の耳に届いたのは
「嬉しい!スッゲー嬉しい
俺!人生初告白の初オッケーだ」
子供みたいに喜んでる柊の声だった
なんだか・・・力が抜けて
クスっと笑いに変わる
ずっと煩い心臓だって
もっと笑顔が見たいって思いも
全てここへと繋がってる
トラウマのこともあって嫌いだと・・・
大嫌いだと思ってきた柊のこと
気づけば好きになっている
強引に攻めてこられたけれど
全然嫌じゃない・・・
言葉で伝えたくて
覚悟を決めた
「・・・好き」
囁くように溢した告白
もちろんエスパー並みの柊は聞き逃すはずもなく
目を見開いた後で破顔すると
「ありがとう・・・花乃
俺も好き・・・いや
好きより、もっと愛してる」
低く甘い声で囁くと
フワリと唇を重ねた
啄むような口付けと
合間に囁く「好き」と「愛してる」に翻弄され
心ごと甘く溶かされた
fin
美陽森*です(^^)
「憧れのアナタと大嫌いなアイツ」
最後までお付き合い頂きまして本当にありがとうございます。
表紙で[どん亀更新]と書いて予防線を張ったことで安心したのか・・・
どん亀・・・更に、どん亀・・・
我ながら空っぽの頭に閉口
ゆっくりじゃなくて止まってるじゃん!と
突っ込まずにはいられない程お待たせしてしまいましたね
ごめんなさい(^_^;)
それでも飽きずに更新を追っかけて頂いた皆さん
本当にありがとうございました
この作は野いちごも公開対象なので花乃が【好き】と言えるまでで終わりです。
その後のお話も、花流と麻美の話も
いつか書けたらな〜←嘘、願望だけです!
完結にあたり一話から読み返してみたら誤字脱字の多いこと(T ^ T)
見つけ次第訂正していますが完全ではないかもしれません
そこも含めてひとつ広い目で
更に温かい心でお許し願います。
では、また
皆さんとお会い出来ることを願って・・・
2018.12.31 美陽森*