慣れないことをしたせいと霊力を奪われたせいで、一気に深い眠りへと落ちていった。体が重ダルい――それだけじゃなく……。
「何だか、どこかに縛り付けられているような感じがする?」
マブタを開けるとそこは、見慣れた風景だった。傍には弓道部の部室があり、空を見上げたら黄金色の葉を付けた木が枝を風になびかせている。視線を落として体を見ると、真っ赤な鎖がこれでもかと巻き付いていて、ちょっとやそっとじゃ外れないようになっていた。
「どうして俺が、こんな目に遭ってるんだ!? もしかして博仁くんが、俺の体を使って炎を出したから?」
冷や汗がたらりと額を流れていく。これじゃあ罰を与えられているみたいじゃないか、全然関係ないというのに。
「……関係ないワケじゃないよな。俺が自分の力を使って、進んで解放したんだから。彼の代わりに、縛り付けられているってことなのかな」
それとも――。
「黙って、このままでいるワケにはいかない。悪いけど解かせてもらうよ」
何だかイヤな予感がするんだ、こうしちゃいられないっていう。
「ふっ、んっ~~~!!」
両腕の力を使って引き千切れるかやってみたけど、まったくビクともしなかった。ムダに息が切れるだけなんて、すごく非力に思えてならない。
「そうか……。博仁くんが教えてくれたように、霊力を使ってイメージして解けばいいんだ」
まだ完全に力が回復していないかもしれないけど、鎖を解くくらいの力は何とか残っているかもしれない。
「イメージ、イメージ……。鎖を解くんだ。引き千切ってみせるイメージを――」
目を閉じて頭の中に念じると、手で引き千切った手ごたえを二の腕に感じた。硬かった鎖が伸びていくので、体が出せるまで伸ばしきって無事に脱出する。
ほっとして一歩踏み出したら、いきなり暗い闇に体ごと落とされた。
「うわあぁあぁっ!」
気がついたら、自分の部屋のベッドの中だった。飛び起きて汗でびっしょりな額を拭ったときに、どこからともなく声が聞こえてくる。
『やめろっ、来るな! 僕はまだ』
「この声、博仁くんの声だ……。どこにいるんだろう?」
俺の霊力をとっていったからなのか、繋がっているような気がした。
「そんなに遠くない場所にいそうだな。行ってみよう!」
ジャンパーを羽織り、お守りの数珠を片手に部屋を飛び出し、玄関を目指して階段を駆け下りた。
「何だい、騒々しいね。こんな遅くに」
リビングからのん気な顔した母さんが、ひょっこりと顔を出した。その姿をチラッと横目で見て、投げかけられた言葉を華麗に無視し、黙々と靴紐を結んでいく。
「どこに行くんだい? ウチの外出時間は、とうに超えているんだよ」
「ちょっとそこまで。すぐに戻るから」
「……霊体になって、戻ってくるかもしれないのにかい?」
その言葉をすごく重く感じてしまい、手にした靴紐がハラリと解けてしまった。
「やれやれ。好きになった女のコが幽霊の次は憧れたコが幽霊でしたって、本当に間が悪い息子だこと」
「だって……身の回りに霊に関して、相談できる友達がいないし。母さんはこんなだし」
「こんなので悪かったね。お前のような半人前の面倒が見られるのは、私くらいしかいないんだよ。しかもこれから出かけるとか、不良になりたいのかい。この、半人前不良霊能者め!」
ばこんと頭を、平手で思いきり叩いてきた。
「いったいなぁ、もう!」
「ちょっと待ってなさい。一緒に行ってあげるから」
「えっ――!?」
一緒に行くって、どうして――?
「何を不思議な顔してるんだい、当然だろ。霊力が回復していない可愛い息子を、みすみす死なせるワケにはいかないでしょ、まったく!」
吐き捨てられるように告げられた言葉だったけど、それでも言葉の端々に愛情が感じられてしまい、照れくさくなって思わず俯いてしまった。
こうしてふたりで向かった先は、通学路の途中にある憩いの公園だった。
「何だか、どこかに縛り付けられているような感じがする?」
マブタを開けるとそこは、見慣れた風景だった。傍には弓道部の部室があり、空を見上げたら黄金色の葉を付けた木が枝を風になびかせている。視線を落として体を見ると、真っ赤な鎖がこれでもかと巻き付いていて、ちょっとやそっとじゃ外れないようになっていた。
「どうして俺が、こんな目に遭ってるんだ!? もしかして博仁くんが、俺の体を使って炎を出したから?」
冷や汗がたらりと額を流れていく。これじゃあ罰を与えられているみたいじゃないか、全然関係ないというのに。
「……関係ないワケじゃないよな。俺が自分の力を使って、進んで解放したんだから。彼の代わりに、縛り付けられているってことなのかな」
それとも――。
「黙って、このままでいるワケにはいかない。悪いけど解かせてもらうよ」
何だかイヤな予感がするんだ、こうしちゃいられないっていう。
「ふっ、んっ~~~!!」
両腕の力を使って引き千切れるかやってみたけど、まったくビクともしなかった。ムダに息が切れるだけなんて、すごく非力に思えてならない。
「そうか……。博仁くんが教えてくれたように、霊力を使ってイメージして解けばいいんだ」
まだ完全に力が回復していないかもしれないけど、鎖を解くくらいの力は何とか残っているかもしれない。
「イメージ、イメージ……。鎖を解くんだ。引き千切ってみせるイメージを――」
目を閉じて頭の中に念じると、手で引き千切った手ごたえを二の腕に感じた。硬かった鎖が伸びていくので、体が出せるまで伸ばしきって無事に脱出する。
ほっとして一歩踏み出したら、いきなり暗い闇に体ごと落とされた。
「うわあぁあぁっ!」
気がついたら、自分の部屋のベッドの中だった。飛び起きて汗でびっしょりな額を拭ったときに、どこからともなく声が聞こえてくる。
『やめろっ、来るな! 僕はまだ』
「この声、博仁くんの声だ……。どこにいるんだろう?」
俺の霊力をとっていったからなのか、繋がっているような気がした。
「そんなに遠くない場所にいそうだな。行ってみよう!」
ジャンパーを羽織り、お守りの数珠を片手に部屋を飛び出し、玄関を目指して階段を駆け下りた。
「何だい、騒々しいね。こんな遅くに」
リビングからのん気な顔した母さんが、ひょっこりと顔を出した。その姿をチラッと横目で見て、投げかけられた言葉を華麗に無視し、黙々と靴紐を結んでいく。
「どこに行くんだい? ウチの外出時間は、とうに超えているんだよ」
「ちょっとそこまで。すぐに戻るから」
「……霊体になって、戻ってくるかもしれないのにかい?」
その言葉をすごく重く感じてしまい、手にした靴紐がハラリと解けてしまった。
「やれやれ。好きになった女のコが幽霊の次は憧れたコが幽霊でしたって、本当に間が悪い息子だこと」
「だって……身の回りに霊に関して、相談できる友達がいないし。母さんはこんなだし」
「こんなので悪かったね。お前のような半人前の面倒が見られるのは、私くらいしかいないんだよ。しかもこれから出かけるとか、不良になりたいのかい。この、半人前不良霊能者め!」
ばこんと頭を、平手で思いきり叩いてきた。
「いったいなぁ、もう!」
「ちょっと待ってなさい。一緒に行ってあげるから」
「えっ――!?」
一緒に行くって、どうして――?
「何を不思議な顔してるんだい、当然だろ。霊力が回復していない可愛い息子を、みすみす死なせるワケにはいかないでしょ、まったく!」
吐き捨てられるように告げられた言葉だったけど、それでも言葉の端々に愛情が感じられてしまい、照れくさくなって思わず俯いてしまった。
こうしてふたりで向かった先は、通学路の途中にある憩いの公園だった。