俺の名前は、三神優斗(みかみ ゆうと)私立高に通う高校2年生。つい最近になって、霊能力に目覚めたばかりの半人前でもある。

 こういう能力を持っていると周りのヤツラが面白がったり、奇異な目で見たりすると想像ついたので、一部のヤツを除き、それを隠していたのだが――。

 俺の思惑とは裏腹な状態に、追い込まれてしまった。

(やっぱり、見せるべきではなかったということなんだな。今更言っても、既に遅いのだけれど……)

 うわぁと思いながら体を小さくしても、振り返って俺を見るクラスメートの視線が、これでもかとぐさぐさ刺さってくる。

 ことのはじまりは2週間後に行われる学祭について、クラスの出し物をみんなで決めていたときだった。

「なぁなぁ、他のクラスがやらないことを企画してみないか?」
 
 誰かの提案に、一番前にいた岡田が颯爽と手を上げるのを、ぼんやりと眺めていた。

「だったら、ちょーっとばかり季節はずれだけど、本物の霊能者を使って何かするのはどうだ?」

 その言葉に、クラス中がざわめく。俺は顔を引きつらせるしかない。岡田、まさか――。

「実はさ、三神は俺を助けれくれた、すっげぇ霊能者なんだ!」

 ああ、言っちゃった。一番後ろの席にいる俺は、話題という名の餌食となってしまった。

 岡田は困惑した俺の視線を無視して、斜め後ろにいる同じ写真部の鈴木に目配せする。すると、颯爽と立ち上がるなり話し出す。

「俺ら写真部でコンテストに出す作品を、校内で撮影していたんだ。その中の一枚に、幽霊が写った写真が撮れちゃってさ。三神の家、霊障相談とかしてるから、何とかしてもらおうと話をしたワケ」

 鈴木のセリフを引き継ぐように、岡田がこれまでの経緯を説明すべく口を開いた。
 
「そしたら三神本人が霊能力があるって言って、俺たちの目の前で華麗に除霊をしてくれたんだよ。すっげぇカッコよかった!」

 お前たちの前でなんて、除霊してないし――。

「三神、そんな力があるのか!?」

「ねぇ私に何か憑いてない?」

 他にもたくさん話かけられたけど、大量の幽霊に対処ができない今の俺では当然、目の前の人間に対しても同じだった。ズリ下がったメガネを元に戻し、口をぱくぱくするのが精一杯な状態……。

「はいはい、静かに! 今はクラスの出し物を決めなきゃ。岡田の提案に賛成な人は、挙手してください」

 俺以外のクラスメートのほとんどが、手を上げていた。

 無理もない――学年で一番人気の高い出し物を投票で決めていくのだが、一番になったクラスには理事長から学年末に行われる、お楽しみ会という名のパーティを全額負担してもらえるゆえに、みんなそろって真剣になるんだ。

 他のクラスがやりそうなことをしても、お客は集まらない。だからこそ、目の惹くものをやらなければ。

「俺まだ浄霊しかできない、半人前なんですが――」

 そんな俺の声を無視して、どんどん話が進められていく。

『イケメン霊能者、ここに降臨っていうコンセプトでいい感じ?』

 やって来た人に、アーメンって拝んでしまうかも。

『もしも、本物の幽霊が来たら大騒ぎになるね』

 自分で対処ができないようだったら、迷わずに逃げますけど……。

『すべては三神にかかっている、全力で頑張ってくれ!』

 熱い視線と言葉を浴びせられた結果、断れなくなった俺。泣き出しそうになりながら、うな垂れるしかなかった。