その日の夜。

同じ部屋のときわと、お風呂に入った。

「へえ。光清がそんな興奮するなんて。よっぽど紅葉の事、心配だったんじゃない?」

「う〜ん……」

私は湯船のお湯に、顎まで浸かった。

「でも不思議だね。本の中にトリップするなんて。」

「そう!物語りの中だよ?あり得なくない?」

水面を叩いたせいで、お湯がときわにかかる。


「でもさ、なんかきっかけがあるんじゃない?」

「それが全く分かんないんだよね。」

何がどうなって、そんな事になったのか。

ちっとも検討がつかない。


「でさ、ぶっちゃけどうなの?そのイケメン。」

ときわがニヤニヤしている。

忘れてた。

ときわもイケメンが好きなんだっけ。

「うん……なかなかだよ?」

「くわ〜〜私も行きたい!」

悔しがっているときわを見ると、複雑だ。


もしトリップするのが、私じゃなくてときわだったら。

あのジャラールさん、いやハーキムさんなんてとっくの昔に、落ちていたと思う。